ポイント1:知っておきたい、熱中症と労災の関係
夏場になると特に搬送される方が増える熱中症。
過酷な労働環境の中で発症され、重篤な状態に陥られる方も少なくありません。
このような場合、熱中症は労災の対象となるのでしょうか。
また、何か、認定されるための条件などはあるのでしょうか。
以下に、熱中症と労災の関係に関する基礎知識をご紹介していきますので、ぜひ、参考になさってください。
ポイント2:熱中症と労災に関する基礎知識:そもそも労災とは?
熱中症が労災の対象になるかどうかについて知るには、まず、労災とはどのようなものなのかについて、知っておかねばなりません。
いわゆる労災とは、労災保険のことです。
労災保険とは、労働災害に関する保険制度です。
労働災害とは、仕事が原因で、病気になったり、怪我をしたりすることです。
これらに対して保険金が支払われるのが、労災保険制度です。
仕事が原因の場合に限りますから、仕事以外の原因による場合や、仕事が原因であると認められない場合には、労災の対象にはなりません。
また、仕事が原因の場合でも、経営者の方や請負の方の場合には、労災の対象とはなりません。
なお、労災保険の掛け金は会社等が支払うことになっていますが、万一、会社等が掛け金を支払っていなくても、保険金を受け取ることは可能です。
ちなみに、このような場合、会社等は未払い分の掛け金も納めなくてはなりません。
労災の請求は、その会社等から退職した後でも可能なのですが、時効がありますので、請求される場合にはお気を付けください。
請求先は労働基準監督署です。
スポンサードリンク
ポイント3:熱中症と労災に関する基礎知識:熱中症は労災の対象か?
労災の対象となるのは、仕事が原因の病気や怪我などです。
熱中症は怪我ではありませんから、熱中症が「仕事が原因の病気」に含まれているのかどうかがポイントになってきます。
これについては、『労災保険の業務上疾病の範囲に係る施行通達(昭和53年3月30日付)』に記されています。
業務上疾病(ぎょうむじょうしっぺい)とは、業務つまり仕事が原因の病気のことです。
この通達には、どのようなものが業務上疾病に含まれるのかが記されています。
同通達の『2 別表各号の規定の内容』に、『チ 「暑熱な場所における業務による熱中症」(第2号8)』とあります。
つまり、「暑い場所で仕事をしていたことが原因の熱中症」は、業務上疾病に含まれる、ということです。
具体的な例としましては、夏場の屋外での労働や、高温の炉の前での作業などが挙げられています。
また、「暑熱な場所」とは、体温調節がうまくできないくらい温度の高い場所のことです。
このように、仕事が原因の熱中症は業務上疾病に含まれており、労災の対象となります。
熱中症と労災に関する基礎知識:実際に認められるかどうかはケースバイケース
前項でご紹介しましたように、熱中症は労災の対象となります。
ただし、実際に保険金が支払われるかどうかは、ケースバイケースです。
これはどういうことかと言いますと、熱中症なら何でも認められるわけではないということです。
あくまでも、それぞれのケースについて、仕事が原因かどうかのチェックがなされ、明らかに仕事が原因であると認められた場合にだけ、保険金が支払われるのです。
つまり、熱中症と仕事の間に明確な因果関係があるかどうかが重要になってくるということです。
また、それだけではなく、「仕事以外のことが原因で発症したのではない」ということもポイントです。
たとえば、暑い職場に来てすぐに熱中症になって倒れたとしても、職場に来る前に暑い戸外で長時間ジョギング等をしていたのであれば、そちらの方が原因の可能性が高いですよね。
ですから、保険金が支払われるには、他のことの影響ではなく、あくまでも仕事が原因で熱中症になったのだ、と認められる必要があるのです。
夏場の屋外作業の場合ですと、『作業環境、労働時間、作業内容、本人の身体の状況及び被服の状況その他作業場の温湿度等の総合的判断により決定されるべきものである。』という通達が出ています。
これは、熱中症になった時の職場の環境などだけではなく、本人の体の状態やどんな服装だったのかなども含めて、仕事が原因で熱中症になったのかどうかを判断する、ということです。
『仕事も原因』ではなく、『仕事が原因』かどうかが重要、ということですね。
ポイント4:熱中症と労災の関係に関するまとめ
以下に、熱中症と労災の関係について、簡単にまとめさせていただきます。
・労災は、仕事が原因の病気や怪我が対象。
・経営者や請負の場合には、労災の対象にならない。
・会社等が掛け金を払っていなくても、労災の保険金は受け取れる。
・労災の請求には時効があるので注意。
・熱中症は業務上疾病に含まれるので、労災の対象になる。
・実際に保険金が支払われるには、他のことが原因ではなく、仕事が原因で熱中症になったのだと認められることが必要。
スポンサードリンク